Stack Overflowが実践する質の高いQ&Aコミュニティ運営の5原則
少し前になりますが、Google社で開催された「Stack Overflow Tech Talk」というイベントに参加してきました。
Stack Overflowというのはプログラミングに関するQ&Aサイトです。何かを実装していて行き詰まった時、ググった結果Stack Overflowに行き着いて解決するということが多々あるような有名サイトです。
今回の講演では実際にStack Overflowを運営するエンジニアの方から、Stack Overflowを始めとするStack Exchangeネットワークでの、質の高いQ&Aコミュニティ運営の5原則的なプレゼンがありました。
(※ Stack Exchangeには「All Sites – Stack Exchange」にあるように様々なジャンルのQ&Aサイトがあり、その中のひとつに Stack Overflow があります。)
第一印象 – デベロッパー以外はサイトから出ていくべき
Stack Overflowができる前、競合となるQ&Aサイトを実際に見て調べたところ、
- Yahoo! Answersには変な質問ばかり。Q&Aサイトというよりは、ただのおしゃべりサイト。
- Askville には文法のでたらめな質問があったり、明らかにスパムなのにそのまま放置されていたり。
というような、ひどい状態だったと。こんな第一印象では良くないよね、ということでStack Overflowは専門的な質問が並ぶようにしているそうです。
投資家からもその内容がわからないと言われたことがあるそうですが、これはむしろそうあるべきで、デベロッパー以外はサイトから出ていくべきであるという印象を持たせることで、専門性の高い投稿が集まるようにしているとのこと。
投票 – 良い質問、良い回答がすぐに見つかるように
Stack Overflowは質問や回答にユーザーが投票できるようになっています。これによって人気のある質問、最も役立つ回答に素早く辿り着けます。
求める回答が出るまでに会話のように回答が続くことが多く、例えば検索エンジンから来た人にそれをそのまま見せてもよろしくない。しかし投票の多いものを上に表示すれば、すぐに答えがわかる。
ポイントは質問者がベストアンサーを選ぶわけではないので、主観的ではなく客観的な評価になるという点でしょうか。
評価 – ユーザーが自慢できるように、なおかつユーザーを認めてあげる
Stack Overflowのユーザーは、他のユーザーから一定の評価を受ける(ポイントがたまる)と様々なバッジをもらえます。さらにどんどん評価が上がるとユーザーカードというプロフィールカードのようなものが与えられ、そこには自分で好きな内容を書けるようになっているそうです。
個人的にポイントやバッジってそんなに効果あるの?と思っていたのですが、心理学的に見てもユーザーはそういった評価の可視化を好む傾向にあるとか。
また、ユーザーは他のユーザーからどう思われているかという点を気にするらしく、一人でも誰かが認めてあげることが大事らしい。
政府(統治) – ユーザーの評価機能をうまく機能させるために
Stack Overflowではユーザーの評価が上がると、サイト内でできることが増える仕組みになっているそうです。
また、最上位ランクの評価を得たユーザーは「モデレーター」となり、社員とほぼ同等の権限を与えられるまでになります。ただし、モデレーターにはそれ相応のトレーニングが必要であるとも言っていました。
また、Stack Overflow自体の改善すべき点について意見を出し合いディスカッションするための「Meta Stack Overflow」というサイトも用意されています。(はてなでいうところのはてなアイデアみたいな感じですかね。)
こういった仕組みにより、ユーザーは評価を上げたくなり、そのためにはサイト内で良い行動をしなければならないので、結果として良いコミュニティが出来上がるということでしょう。
法律 – ふさわしくない質問は模範とする
最後は法律、というと固く聞こえますが、すなわちStack Overflowに投稿していい質問とダメな質問です。例としてStack Overflowにふさわしくない質問がいくつか挙げられていました。
- 過去にすでにされている質問
- トピックはずれな質問
- 建設的ではない質問 (議論や論争になりそうなもの)
- 本当の質問ではない質問 (新サービスのいいアイデアある?みたいな)
- その人にしか役立たない質問
これらの質問は「やってはいけないことの模範」とするために、削除はせずにCloseするだけにしているとのことです。
Stack Overflowのモットーは「We hate fun!」だ、というのも面白かった。
感想
今回の講演テーマは「The Cultural Anthropology of Stack Exchange」(Stack Exchangeの文化人類学) というものでしたが、文化人類学についてはよく理解してないので、そのあたりは気にせず聞いておりました・・・。
Stack Overflowで何度も情報が見つかって助けられたことがあるという経験の裏には、このようなしっかりとしたコミュニティ設計があるんだなと感じました。
なお今回の講演と同じ内容で、Stack Exchangeの共同創業者である Joel Spolsky 氏自身が講演された映像は以下から見ることができますのでご参考までに。
» Joel Spolsky – Cultural Anthropology of Stack Exchange on Vimeo
» Joel Spolsky at TechHub – YouTube
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